サモンナイト





 サモンナイト(無印)のDS版をやっていた頃に書いたもの。
 特に山もなければオチもない。
 その時の勢いに任せて書いたもの。

主人公トウヤ(男)
パートナー・ソル(男)

一人、異界の地で夜空を見上げる。
これで何度目だろうか。
途方に暮れるには周りがあまりにも優しくて、悲観するにはあまりにも忙しくて、嘆くにはあまりにも辛くて。

そんな自分を、まるで他人のように感じていて。

つい、この間まで自分は制服を着てそこそこの不安と人間関係に悩みながら安全な所にいたのに。

夜風が頬を優しくなでながら、通り過ぎていく。それは昔と変わらないのに。

「トウヤ」
不意に声がかけられた。
ここに僕を召喚したという召喚士。

「ソル。なにかあったのか?」
一抹の不安に駆られた。
以前にも、夜間騒動が起こったことがある。それを知らせに来たのかと思われるほど、夜でさえ分かるほどソルの顔色が悪かった。

「何もない。ただ登るのが大変だっただけだ」

「あぁ」
ここは建物自体が少し傷んでいるようで、雨が降ると雨漏りもしていた。その屋根に上ってきたのだ。
本来は体力のあまりない召喚士、しかしソルは活発だから滑りこけもせずに上がってこれたのだ。

「隣いいか?」
煙突の横に座っている僕の隣を指さす。
しかし、僕がそちらに移動しソルに煙突の隣を明け渡した。その方が安全だからだ。

「こっちに座ったら?」

「あぁ」
ソルはそれだけを言うと煙突にしがみつきながら、滑らないように座った。座った後も煙突から手を離さずに。

「じつはトウヤにこれを渡そうと思って」

ローブの中から水筒を引っ張り出すと、それを僕に渡した。

「これは?」

ソルがこんな時に渡すぐらいのものだ、よほど重要なものなのだろう。
一体何なんだろうか?

「紅茶。こんなところじゃ寒いだろうと思ってさ」

心配してくれていたのか。

「ありがとうソル」
水筒のふたを開けると湯気がたった。
やはり異界の紅茶は味が違うのか、匂いも違ったものだった。

「俺が淹れたんだ飲んでくれ」

「うん。飲ませてもらうよ」
一口飲んだ。……苦い。

「手頃な茶葉がなかったんでゲッドクーの葉で淹れたんだが。どうだ?」

僕は声も出せなかった。
ゲッドクーは毒を治療するのに用いる葉っぱだ。
解毒剤などはその毒素を持つ植物などからも作られる、と嘘か本当か聞いたことがある。
それならば、微妙に毒の成分が含まれているとも……考え……。

「トウヤ? どうしたんだ」

しかし、ソルの好意に対して苦いとは言えない。知らずに淹れてしまったのかもしれない。

「……うん。温かい」

「そうか。よかった」

笑ってくれた。悲しませなくてよかったと思う。ソルも何かで悩んで、辛い思いをしているのだから。

「よし。明日も持ってくるよ」

よしてくれ。

とは言えなかった。

END