ここは、太陽系、第三惑星――アース。

マウス暦、2544年。







宇宙開拓も進み、太陽系の外にある星系から、宇宙人が遊びに来るようなご時世。



宇宙人と一言でいっても、アースに現存する動物に近い形のものが多い。

逆によく想像しがちな、タコやイカの類いはあまり見掛けられない。
いることにはいるようだが、未確認だ。




第一次宇宙戦争から、はや四年。

アースは参加していなかったのだが、アース侵略を狙う宇宙人は少なくなかった。




だが、中立の大星ヒポクリットの第十二代星王、レオ王と『両星の物資、人の行き来の自由』等を条件に平和締結を行い、侵略者の数は減った。










…かに思われた。


条約の効力は、その場しのぎにしかならず、最近では一般人に被害が及ぶ例もあった。



そして、その事件をきっかけに、両星の重要幹部らが秘密裏に行動を起こした。




――そうして…今年、ある組織が密やかに結成された。――







* * * * * *


『――昨夜、ヒポクリット星の現星王レオ王の第一王子が、失踪しま――』




「王子が逃走する時代の到来ですかな」



そう言いながら、男性は繊細な意匠が凝らされたコーヒーカップを、音を立てないよう注意を払い、黒い革張りの椅子に腰掛けている女性の前に置く。
コーヒーカップの置かれたデスクの上には紙の山がいくつかそびえている。



「原因は勿論、勉強が嫌だったんだろうね」



同時にため息をついて、顔を見合わせる。



「現王も時々、公務を逃げ回っているそうじゃないか」

「そういう、血筋なんだろうね」

「…血筋、ですか…」





A級事件をズラズラと報道しているTVには、キャスターも映っていなければ、事件現場の映像も映ってはいなかった。
ただ文字のようなものが、下から上に駆け抜けているだけである。
原因は、情報の漏洩を防ぐための暗号化によるものだ。
暗号は秒単位で変化するため、それに対応する強力な暗号変換装置と、音声出力をする言語解析装置の方も必要。

だがそれ以上に、ハッカーが呆れる程の強力なプロテクトが施されているのを踏まえると、かなりのことをこなしている。
だから、このTVは映像が映らなくても仕様がないと言える。

旧式である箱型のTVなら、なおさらだ。



「ところで、例の…」

「はい。昨日、やっと最低限のザイを見つけてきましたよ」



女性が何か言おうと、口を開きかけたその時にそれは起こった。


ビービーとけたたましい機械音と、部屋中が点滅する赤い光に包まれた。



『緊急事態発生!
 都市部近くの山中で巨大な蛇が発見された!
 都市に行進する恐れがある。
至急、現場に向かい対処せよ!』

「コーンヴェグめ…
 奴ら、試してるな」



男性の一人言には気付かない様子で、女性はデスクの上に置かれた十数枚のカードに手を伸ばした。
適当に一枚を引く。
そこには、大鎌を今にも振り降ろそうとする、黒い衣を纏った骸骨が描かれていた。
しかし、その絵の向きは上下逆らしく逆さになっている。
女性はそれを見て、口の端をおもむろに持ち上げて、こう言った。



「丁度良い。
 初任務といこうかね」


手慣れた手つきで、作業用デスクの下に手を滑り込ませる。
ある箇所を指で軽く2、3度叩くと、箱型TVのものと思われる黒いリモコンが出てきた。
そのリモコンをやはり箱型TVに向けて、ボタンを押す。








* * * * * *




「ここは何処なんだぁーーーーー!!」



目が覚めてみると、そこには見知らぬクリーム色の天井。

窓はあれども、光も差さない。
それはそうだろう。
外の風景と呼べるものは、灰色のコンクリートの地肌が覗いているだけなのだから。

床は、いかにもワックスをかけたばかりのフローリングの輝き。

部屋は、今悲鳴を上げた少女が腰掛けているベッド一つが置かれているだけである。
ほぼ真四角の質素な部屋…というより監禁室に見える。


残された最後の希望《扉》は…?



「入口が、な…い…?」



申し訳程度にスリッパがちょこっと用意されていたが、それに気付かないで裸足のまま少女はベッドから降りた。
天井と同じ色の正面にある壁を叩いてみる。
コンコンなんて…生易しい音は返ってこなかった。 耳を押し当ててみると、壁の全面至る所、はたまた床から風が吹いているような、水が巡回しているような、よく分からない機械音がする。
隠し出入り口がないか、少女は一心不乱に探し回った。



「ふ、普通あるだろ。
 …!
 それとも…」



疲れ果てて、しばらくベッドに腰掛けて休んでいた。
そのおかげかどうかは分からないが、何を思い付いたか、少女は窓に突進した。
すぐに枠に手をかけ、開こうとするが鍵がかかっていたので開かなかった。



「あー!! もう!!」



イラつきながらも、かかっていた鍵を外すと窓を開ける。

誰かの歩く音アリ。
微風アリ。
部屋とは違う空気の香りに、思わずニヤリ。

案の定、コンクリートと窓の間には、人一人なら優に通れるスペースがあった。
窓の外に、恐る恐る顔を出してみる。
遥か上方に、天上の光の如く白い光が差し込んで見えた。

少女はそのまま裸足で、垂直にそびえるゴツゴツとしたコンクリートを両足で突っ張って上り始めた。



「いった!
 …ま、負けてはいられない!!」



そう気合いを入れると、少女は一気に壁を上る。
足の痛みをこらえながら…


そうして、外に出られると思った時に、最悪な出来事が少女を絶望へと突き落とした。
格子状の網が出口をふさいでいるのだ。
しかも、ちょっとやそっとじゃ外せそうにないよう、ボルトで留められているようだ。
実際、持ち上げようとしたがビクともしない。
足も痛みで限界が近かった。


その時、目の前の格子に手がかけられていた。
瞬間、ボルトの頭が弾け切れる音と格子が歪む悲鳴が耳を覆った。
思わぬことに、驚いて体の力が抜け…


落ちた。


コンクリートでできた地面に叩きつけられると思うことすら、考えられなかった。



「おいで」



ふわりと体が浮く感覚がした。








「危ない所であったな」


「大事ないか?」



少女の手をとっさにつかんで、軽々と引き揚げた相手は少女を床に下ろしながらそう言った。
少女はそのまま、ぺたんと床にへたりこんでしまった。
少女が、キツく閉じていた瞼を恐る恐る開いてみると、目の前に相手の足があった。
白い足袋に青と見紛うばかりの紫の鼻緒の草履だ。



「お主、なかなか妙な場所から出てきたな」



その声に、ハッと思考が凍り付き、完全停止した。
金魚のように、たた口をパクパクさせている。



「お主、名はなんと?」


「…ヨ、リ?
 ……太陽の陽に里で陽里」


「陽里か。
 拙者は、ロウエン。
 竜に淵と書く。
 リュウエンと読むと、竜泉とも呼ばれる古い名剣の名なそうな」





相手が質問し、それに答えたおかげで、思考能力が回復してきた。

ハスキーヴォイスの侍口調で話す相手を見上げると、陽里はまた驚いて目をしばたかせた。
竜淵の方も、不思議そうに見上げてくる陽里を見つめる。

実は、陽里は竜淵のことを見上げてから理解に至るまで誤った認識をもっていた。


服装は、普段着にはきわめて珍しい薄墨色の男物の羽織袴。
それに合わせた、藍染めの青の細い帯でくくられている。
灰色の髪に、紫の瞳。
顔は端正だが、少しコワい無表情さがある。
左口許にぽつんとあるホクロが印象的な…



女性だ。








明らかに、男物の服装で!
しかも!
声優ばりのハスキーヴォイスの持ち主が、女性だったとはにわかには信じられない。

けれど、そんな状況下でどうして性別が判断できたのかというと、袴から出た狐の尻尾の色が灰色だからだ。



この世界アースには、多種多様な種族がいる。
だから、ここからの説明は違うスペースに記すので気になる方はどうぞそちらを見てください。(長いので)






「それでは、陽里。
 参るとするか」

「参るって、何処に???」



成人男性と並んでも全く見劣りしないであろう身長をもつ竜淵が、片膝をついて困惑したような顔で覗き込んできた。
兎耳族のアタシは、128cmと普通よりは低いことぐらいわきまえているつもりだ。

しゃがみ込まれても仕方ないけど…

竜淵がアタシよりまだ高かったので、腰を更に下げる様子は少し…ムカついた。

巨人かあんたは!!



「すまない。
 184cmあるんだ」



184cm!?
狐尾族でもそうそういない高さだ。
そのうえ、目の前にいる相手は女性だ。



「…ぅげ!?
 心読まれた!!」

「顔に出ている」

「そっ、そんなにぃ?」



竜淵の方はほとんど変わらない無表情で、コクリと頷いた。
顔に出やすい質なのは、自覚していたが、あまりにもタイミングが良過ぎて驚いた。







「そんなことより、ミーティングルームに参るぞ」


「ええぇぇぇ!!??」



言ったが早いか、陽里の隙を突くように、陽里を抱き抱える。
俗にいう、お姫様抱っこである。

抵抗しようともがくが、思った以上に力強い。

動けない。

一見細い腕も、しなやかな筋肉を纏っている。
伊達に男装しているわけではなさそうだ。

と、すぐに陽里は思い出す。
誰があの格子を破ったのかを…

さ、逆らわない方がいいかも…(汗)

静かになった陽里を抱えて竜淵は走った。
病院のように、上下左右全てが白い廊下だ。
景色が変わらないので分かりにくいが、結構なスピードが出ているはずなのに、不思議と体が揺さぶられることはなかった。



「足はまだ痛むか?」

「ふぇ?」

「無理はするな」



この時初めて、陽里は竜淵が抱っこの理由を理解した。
足のことを心配しているのだ。
確かに、痛いのは事実で、皮も少し破けてめくれたりもしている。
しかし実際は、心配される程の歩けない痛みはない。
血は出ていないし、ちょこっと擦り傷等ができているにすぎない。

でも、それなら抱っこじゃなくおんぶでも良かったはずだ。
そっちの方が、遥かにマシだ。



途中一度、エレベーターの中で下ろされると、足に包帯が巻かれた。
ついでに、スニーカーまではかされる。
どこから出てきたのかも、分からない。



「サイズは?」

「…包帯でピッタリ」

「それは良かった。
 包帯を外したら今度買いに行こう」

「え!
 ひゃああぁあ!!」



言うとまた、唐突に抱き抱えられる。
驚き過ぎて抵抗すらできない。
すると、到着音が鳴る。
エレベーターを降りたのは128階。
何の因果か、自分の身長と同じ数字だった。
それだけしか陽里は覚えていない。







* * * * * *



小学校や中学校の教室ほどの広さをもつ部屋。

その部屋の大体部分を、中央に配置された楕円形のテーブルが占めていた。

テーブルの真ん中には、何やら分からないが機械が置かれている。
他にも、散乱した色とりどりのお菓子の包み紙、レース状の紙が敷かれた小さな空のバスケット、蓋が開けっ放しの角砂糖入りの黒い瓶、五色のジャム(野苺、ブルーベリー、グランベリー、林檎、オレンジピール)がズラリと並んでいる。
更に、傷一つない無色透明のティーポット、湯気を上げる白磁のティーカップ、その下にこれも白磁のソーサー、添えられているティースプーンは曇りがない銀色の輝きを放っている。
最後に、何かを描かれている画用紙とクレヨンがテーブルの隅に置かれていた。



「…ちゃぁん。
 シュクルゥ、ケーキが食べたーい。
 買ってきて(はぁと)」

「えぇ!?
 さっき、マロングラッセ食べたじゃないですかぁ!」



マロングラッセとは、大粒の栗を粒ごと煮て、濃いバニラ風味のシロップを染み込ませて、表面を砂糖の衣で固めたお菓子である。
卓上のバスケットの中身であったものだろう。



「さっきはさっき、今は今。
 ねぇ、アップルタルト(はぁと)」



「太るぞ、夙見(シュクル)。
 夭乃厶(カノム)もパワハラに逆らえばいい」



自動で開閉する扉が、機械音を上げて開こうとする瞬間に部屋の外からそう言う声が二人の耳に聞こえてきた。
竜淵である。



「竜淵さん。
 それは無理ですよー。
 …って、何方(どなた)さん?」



そう、不思議そうな目で陽里を見てきた少年(夭乃厶)には、なんの特徴もない。
このアースではノーマルで数も多い人族だと察しがつく。

草色の髪に、黒い瞳。
服装もシャツにデニムパンツと、まったくもって平凡…。
どころか、逆に影が薄そうな少年である。



「わーぉ! ちっちゃい。
 隠し子ぉ? ヤルゥ、竜淵☆」

「ちっちゃい、ゆうな!」

「いや、廊下(そこ)で拾った」



竜淵は更に誤解を生むような発言を無意識に返した。
自覚がないこと程、恐ろしい。



「拾い子ぉ?
 どうりで似てないと思ったぁ☆」



これは絶対、分かってやっているなと陽里は思った。
目の前の少女(夙見)は、猫耳族。
つまり、気紛れでからかい好き。
しかし、だからといって大人しくからかわれて黙っていられるような人間ではない。



「違うわあ!!
 それに早く下ろせ!」

「あ、すまない。
 拙者としたことが…忘れていた」

「拙者としたことが、あまりに小さくて忘れていた!
 でしょっ☆」


プチ。








たとえ竜淵がそう思っていたとしても、絶対言わないであろうことを夙見が面白そうにからかっている。
これには手を出さずにはいられない陽里が、無理に竜淵の腕から抜け出ると、そのまま前方回し蹴りを夙見に放った。



「ヤァッ!!」

きゃぁ♪ウサキックね。
とか、夙見は余裕で考えていた。

「夭乃厶!  アップルタルトにスノーホワイト(はぁと)追加っ!」



そう言いながら、夙見は猫耳族の跳躍力を生かしたジャンプで、テーブルを軽く飛び越えた。
後を追おうとした陽里は、不意に竜淵に抱え込まれた。



「うぅぅ」



陽里が恨めしく見上げると、抱えている人物はダメと言ってる目で見返してきた。
どうやら、足を心配しているらしい。
確かに、簡単に避けられた要因の中にはそれもある。
しかし、過保護だ。



「えぇえ!?
 二個も食べるんですか!?
 ホールで!?」

「モチロン!
 あら、大丈夫よ。
 シュクルゥ、太らないから」








夙見がそう宣言し、夭乃厶がそれを聞いてげんなりしながらも買い出しに扉を出ようとした時だった。

ビービーとけたたましい機会音と、部屋が明滅する赤い光に包まれた。



『緊急事態発生!
 都市部近くの山中で巨大な蛇が発見された!
 都市に行進する恐れがある。
至急、現場に向かい対処せよ!』



一同に緊張が走った。
いったい何が起こったのか理解できない、ただ一人を除いて。



「おど○大捜査線??」

「おしい」

「え? おしいの?」



陽里の疑問を遮るように、テーブルの中央にあった機械が低い起動音を上げながら陽里達の正面にある白い壁に映像を映した。
どうやら、プロジェクターであったらしい。

二人の人の姿が映っている。
しかし中央に映っている人物は、よくTV番組で正体がばれないように目の所に黒い線が入るが、あれのようなものが丁度あり口許から上は映っていない。
クレヨンで塗りつぶされているのだ。
夙見を見てみると、笑いを抑えようとしている姿があった。



…犯人はあいつだ。








「やぁ、お初にお目にかけるね。
 そこにいるのが陽里君かな?
 唐突だが、君はこの星を救ってみないかね?」

「うわ! ほんとに唐突過ぎ」


「口の利き方に気を付けろ!」


女性の横にひっそりと立っていた男性が声を荒げる。
革張りの高価そうな椅子に座った女性が、男性に手で静止をかけてからこちらに話しかけてきた。



「すまないね。
 これが彼の仕事なんだ。
 いきなりこんな所へ連れてこられて、驚いただろう。
 私はカラー。
 ここの司令をやらしてもらっている」

「はあ?」



納得したような納得できないような曖昧な気持ちになり、困惑する。
というか、拉致・監禁の犯人です。発言が気になる。




「まぁ、簡単に言うと。
 カメレンジャーのオレンジを陽里君にどうかと思うんだ」

「カラー司令。
 略し過ぎかと」



思いますと、続けようとした竜淵の耳に信じがたい単語が届いた。








「アタシ、やります」



夙見と夭乃厶も、潔いまでの返答に息をのんだ。



「そうか、やってくれるかね。
 早速、皆と一緒に現場に向かってくれたまえ。
 では、幸運を祈るよ」



プロジェクターが活動を止めて、ブゥゥンといった音が消える。

沈黙が降り落ちるかに思われた。

だが、それはあっさりと、一人の声により破られたのだった。



「あんた馬鹿か!
 死ぬ可能性だってあるんだ。
 まだ間に合う、断った方がいい!」



一見して弱々しいだけの夭乃厶が、別人になったように眉を吊り上げて大声を上げた。

思わぬ反応に、ぽかんとしかけるが、陽里はすぐにこう言った。



「だいじょぶダイジョブ!
 いけるイケル!」



口から発せられた言葉は、完全にふざけている。

しかし、夭乃厶はたじろいだ。
固い決意をした陽里の目に出会ったからだ。
大声を上げた夭乃厶の方がたじろぐ程の、強い意志を秘めた目だった。



「陽里。 参るぞ」

「はい! 竜淵さん」



扉を出て行く竜淵と陽里。
二人の走る足音が廊下に木霊する。





残された二人は、静かに語り慰め彼らに遅れ出て行く。



「夭乃厶、あの場であの子が断ったとしても、結果は同じなのよ」

「…分かってますよ
 …それくらい…」



「アフタヌーンティーが邪魔されちゃったわ。
 戻ってきたら、ケーキとお茶お願いね」








「これで変身。
 …今回は見学だ」



長い廊下を二人は走っている。
走りながら竜淵は、懐から何かを出し、そのまま投げ渡される。
慌ててキャッチした陽里は驚いた。
手に収まる大きさの長方形の物質。



「わわっ!?
 …け、携帯電話?」

「名称はトランス機。
 使い方はこう」



二つ折りになったままそれを刀のように構えて、何もない前方を縦に一閃する。


すると、竜淵が消えた。




「ろ、竜淵さん??」


「ここだ」



陽里の目の前には、ヘルメットとベルト、マントの変な格好をした、小さなカメがいるのだった!!



「これで移動する。
 どうした?」

「竜淵さんっ。
 そっそれ、ァハッ可愛過ぎっ。
 アハハハ!」



廊下の壁をダンダンと叩きながら、涙目で訴えた言葉がそれだった。



「む! 変か?」

「変、変!
 キャーハハハッ!
 ヒィー、ヒィー。
 あー可笑しー!!」



カメ(竜淵)がそれを見て、眉間にシワを寄せる。
それを様子を見て、更に陽里の無呼吸状態が続いた。


最後にはむせ出し、カメ(竜淵)が背中をさすろうと近付くと、陽里は涙を流しながら止めてと切れ切れに言った。








陽里がそれ以上笑うと、笑い死にするかもしれないと思った竜淵は変身をようやく解いた。





「何してるの?
 こんなトコで?」

「理解を絶する状況なのは間違いないですね」



後から追いついてきた二人が、首を傾げて状況を把握しようと頭をフル回転させている。



「構わず、先に行ってくれ!
 すぐに参る!」



渋々といった様子で、二人は走っていった。
竜淵はホッと息をついた。
何故ならさっき、二人がカメに変身していたら、陽里が昇天してしまうのではと心配したからだ。



「うっふふふ!
 アハハハッ!
 ウヒャハハハ!!」



あいも変わらず、壊れたように泣き笑い続ける陽里を助けるために、竜淵は最後の手段を打った。



「すまぬ…
 このようなことはしたくはないが」




その声を最後に、陽里の記憶はプツリと途切れた。



一体全体、何が起こったのか陽里は知らない。








* * * * * *



「もーいーかーい!
 もーいーよー!
 …なーんてね☆
 ニャハハハ」

「あれ? 例の子は?」



竜淵のカメ姿を人バージョンにした色違いの格好で、三人が蛇を探していた。
竜淵はグレイ。
夙見がホワイト。
夭乃厶がグリーンだ。



「置いてきた」



なんともやり切れなさそうな顔で、竜淵はそう言った。
おそらく、手刀か何かで落としてきたのだろう。
と、夭乃厶は考えた。




「あー!
 ミィさん見ーっけ!!」



かくれんぼの隠れている子供を見つけたように夙見は声を上げた。



「いざ出陣!」



三人は蛇の前に飛び出ていき、同時に同じ言葉を叫んだ。



そう。





「カメレンジャー見参!!」








☆次回予告☆

BATTLE2 裏切り者 と その末路


冷酷な言葉を紡ぐのは唇は、いつでも吊り上がっている。
敵か味方か、全ては彼の気分次第。

陽里はカメの姿に耐えられるようになるのか!?
竜淵の心労は増える一方だ。
夙見のスウィーツ注文も気になるトコロ。

次回フレアマンVSカメレンジャー
正義の味方は蹴散らせ!(ウソ)


☆つづくんだカメ☆