クエスト名:神の吐息

8.抱きしめたい



「このピンク馬鹿が言ってたのは本当なのね」

 神の吐息は本当に退魔の効果があるらしく、夜間の襲撃はなかった。

 依頼は果たしたと判断して、早朝に荷物の整理と朝食を終えてから町へと馬を走らせた。

 来るときには路を着色しながら走らなければいけなかったが、帰りは一度も着色する事もなく、馬を休憩させる必要なく町へと辿り着いた。あまりにも早く着いてしまったからなのか、門は出た時と同じく固く閉ざされていた。

 門の金具をマスカルとパステルが激しく殴打すると、まだ寝ぼけていた鳥達は飛び立ち、獣は震えあがった。中にいた者も同じだったようだ。

 倒れる音と崩れる音がした。

 声を掛けてしばらくすると重たい門は開かれた。倒れた時に擦りむいたようで、真新しい傷を付けた門兵が門の傍で睨みつけていた。

 理由無き恨みに悪戯心を抱いたパステルはわざとらしく荷物を落として、捕まえてきた低級悪魔の顔を覗かせてやった。目の合った門兵はその場で卒倒した。

「あら、荷物が落ちちゃったわ」

 これまたわざとらしく荷物を拾い上げ、パステルは笑顔を振りまいた。

 その笑顔は悪意に満ちていた。どうしてその悪意に満ちた表情が一番可愛いらしく見えるのか、それは悪意だからに決まっている。

 短期間に負担をかけ続けた馬達を馬小屋で休ませ、その足で衛兵の詰所へと向かった。

 依頼主の町長に会う前に荷物を片付けたかったのと、もしかしたら詰所にいるかもしれないとの考えからだった。その考えは見事に的中し、町長が一人でコッソリと蜂蜜を舐めている現場に遭遇した。

 まだ早朝の詰所、陰に隠れて一人で何をしているのかと後ろから黙って見ていた所、町長は台所から持ち出してきた瓶にスプーンを突き入れ、中身の黄色い蜜を舐め始めたのだった。そろりそろりと、パステルへしたように背中を押してやると文字通り飛び上がった。

 飛び上がった拍子に床に落下しそうな瓶を受け止め、パステルに放った。町長は片目を閉じて渋い顔で呟いた。

「この事は黙っといてくれ」

 最高の笑みを向け、人数分のスプーンと皿を要求した。町長の顔が更に渋くなったのは言うまでもない。

 早起きの町長と一緒に蜂蜜を舐めていると朝の詰所はほんのりと甘い香りに包まれた。

 蜂蜜の幸せを舐めつつ、依頼を果たした事を伝える。だが、一部の者しか聞こえない音では直ぐに町長が判断できるとは思えず、どうやって説得したものかと悩みながらの報告だった。

 神の吐息なる音はある程度の条件がなければ音がしないだろう、昨日は確実にしていたはずだが自分達が分かったのは耳に聞こえる音ではなかった。

 神の吐息という装置そのものも魔法使いなど魔力を看破する能力が高い者でなければ入口さえも見えない。しかも効果が実感できるかどうかは分からない。

 いざとなれば高位の僧侶を何人か連れて行き装置を見せ、低級悪魔で効果を実証させるしかないだろうかとも思っていた。

 しかし、町長は蜂蜜を舐めながら頷き、依頼の達成を受け入れた。

「昨日、音がしたからそうだろうとは思っていた」

 片目を閉じてスプーンを皿に置いて立ち上がり、町長は奥の部屋に引っ込んだ。出てきた時には大きな包みを四つ抱えていた。

「これが報酬の半金だ。持って行くといい」

 町長に件の音が聞こえていたのにも驚いたが、それ以上に気前の良さに目を見張った。

 報酬が高過ぎる、と最後で出し渋っても良いような報告だ、最悪払わない可能性も視野に入れていただけに町長の行動に驚かされた。町の為といえ一人頭金貨を二袋も払う裕福な町だ、だからといってここまで気前が良いと気持ち悪い。今までの経験からして高確率で裏がある。

 直ぐに金貨に手を伸ばせなかった。

「残り半分はどうなるんです?」

 一人頭金貨一袋でも大金だが、それだけで手を打つ気はない。契約には一人頭金貨二袋となっており、自分は契約に従って正しい事を訊ねている。金額を上乗せしろと言っている訳ではない。それなのに、町長は片目を閉じて苦い顔をした。

「報酬は町と教会が半分ずつ持つことになっておってな。これは町からの報酬じゃ。依頼をした時には教会側もそれで納得したのじゃが、昨日ガリア司祭が戻ってきて『出さん』と言ってきおった。流石に金貨四袋は大きな負担じゃ、出したくないのは分かる」

 チラリと町長は自分達、受給者を見る。

 だからどうした、契約は契約であって守らなければならない。

 依頼をしておいて契約を守らなければ、どうなるか知っているのだろうか。教会は信用を失うだけでなく、身軽な冒険者は商人と同じように情報を売って噂を広める。それだけならまだしも性質の悪い者ならば、どうやってでも契約金を持って行く。

 自分達は性質の悪い者ではない、だが契約金は必ず受け取る。その結果に起こる悲劇などへは毛ほども感情移入せずに。

「あんたらが帰ってくれば残る報奨金についてガリア司祭は話をつけると言っていたからのぉ、ガリア司祭が時間を作るまで待ってくれんか?」

 蜂蜜を舐め終えた町長はスプーンと皿を片付けに席を立った。



**



 後に残ったのは報酬の半金と溜め息だった。グレナンデが自分の報酬の中から低級悪魔の料金を支払い、それをパステルと二人で分けて仕舞いこんだ。

 蜂蜜を早々に片付けて荷物の整理をすると何もすることが無くなってしまった。ガリア司祭が時間を作るのを待てというのなら、待つしかない。

 宿屋でゆっくりと眠りたかった。しかし、いつ呼び出されるとも知れない中では無理な話だった。

 仕方なく詰所の仮眠室で交互に仮眠をとりつつ、武器を広げて手入れをする事にした。流石に仮眠室は使われているようで、埃は積もっていなかった。二段ベッドが四つ詰め込まれ、大きな机が入っていても動けるほど、無駄に広い仮眠室は有難いと同時に不愉快だった。

 どうしてこんなに無駄な大きさが必要なのか。大きな机を中央に置くのは明らかに邪魔だ。荷物を置くのには便利だろうが、急を要する時には不便で仕方がないだろう。つまり急を要する事が無いと思っている、そんな配置だった。

 武器の手入れをするのには大いに役立ったのだが。

 重い荷物を載せると机は軋んだ。壊れないかとパステルに軽く叩かせ、大丈夫だろうと判断した。

 もし、机が壊れても部屋を貸してくれた町長と自分達を待たせたガリア司祭の所為だ。そして、この程度の重みに耐えかねた机自身の所為だ。

 武器は使用直後にも簡単な点検するが、後で時間を作って隅々まで見ておかなければいけない。見逃しがちな小さな傷が原因で、何かへ当たった際に破損する可能性もある。

 何より打ち合いをする物の場合、変形が命取りになる。変形が小さい場合は自分達でもなんとかできるかもしれないが、変形が大きいと一度打ち合っただけ壊れてしまう可能性もあるのだ。

 武器に予備はあるが咄嗟に交換できなければ素手で武器を破壊した相手と戦う事になる。そんな事は避けたい。

 自分も、普段は使わないナイフの点検に余念がない。怪我をしないように気をつけながら砥石で砥いでいく。血と脂で刃は痛む、汚れを落とし刃が鈍い光を取り戻した所で鞘に収める。

 パステルが剣を柄から刃先までを水平にして確かめ、唸った。片目を閉じて歪みを見ているようだが問題があったらしい。

「やっぱり動く石像なんて斬るもんじゃないわね。刃こぼれが酷い。それに歪んじゃってる。次、何か切ったら折れるかもしれないわね」

 パステルは諦めたように溜息をついて剣を鞘に収めた。今回は使っていないだろう予備の剣を取り出し、こちらも確かめ始めた。特に異常が無いのか何も言わず鞘に収めて予備を腰のベルトに差した。歪んだ剣は荷物に入れて盾の点検に入った。

 パステルの点検は自分よりも長い。

「どうします。買っておきますか?」

「この町には良い品が無い、手持ちの物の方が良いだろう。武器が最低な町だ」

 これには、同じように武器の点検をしているマスカルが片刃の剣を砥ぎながら答えた。

 それもそうだった。初日に衛兵が剣の錆をとっている、とマスカル自身が言っていた。代わりの剣があれば買っていただろう。

 動きたくない為に時間をかけて錆を落として使えないとの意味だと思っていたが、本当に武器がない可能性もある。竜の幼生を解体した時も使える物が少なく、手持ちのナイフを使った。

 武器に関してパステルやマスカルのような前衛の知識は侮れない。命を預けるような物だからこそ詳しくなる。

 一通りの点検を終えると、本格的に手持無沙汰となりベッドに転がった。どこかに出掛けている間に呼び出されても困る、軟禁状態に近い時間が苛々とさせた。既に陽も高い。

 眼鏡を柔らかい布で拭いていると、ドアがノックされた。

 声を掛けると一人の若い僧侶が盆に飲み物を乗せて入ってきた。会釈をして机に飲み物を置いていく。

「今回は御疲れ様でした。さぞ大変だったでしょう」

 笑って祈りの言葉を捧げる若い僧侶。

 それにグレナンデが返し、飲み物を口にした。毒物が入っているとは思わないらしい。それとも毒物を無毒にするような言葉だったのか。

 若い僧侶は部屋から出ず、そのまま近くのベッドに近寄り質問を投げかけてきた。まだ若く外の世界に興味があるのか、町に来るまでの話をせがんできたのだ。

 忙しいわけでもない、暇を潰すのには持ってこいの相手だった。

「貴方はどのようにして魔術を体得されたのですか? 私も司祭を目指す者、魔術に関しても沢山の知識を得たいのです」

 目を輝かせ、自分に若い僧侶は尋ねる。

 グレナンデに聞けば良いだろうに、それでも少し嬉しかった。自分が尊敬されているのだと勘違い出来るからだ。感情を押し隠し、術は身近な者に尋ねるように返した。

 若い僧侶は残念そうに目を伏せて苦笑いする。

 これ程宗教が幅を利かせている町だ、魔術師の数は少ないだろう。僧侶と魔術師は術を使うという共通点はあるが、宗教と魔術には確かな溝がある。一部の宗教は魔術に対して排他的だ。

「教会ではガリア司祭様が群を抜いて魔術にも秀でていらっしゃるのですが、ガリア司祭様はお忙しいのです」

 だから自分に指導して欲しいとでも言いたいのだろうか。

 魔術は一朝一夕で覚えられないのは知っているだろうに、懇願するような目で見ないでほしいものだ。

 教会から派遣されただけなのか、ガリア司祭だけが魔術にも関心があったのか、他にも町には魔術師がいるのか定かではないが、魔術を学ぶのは難しいのだろう。

 遠くで誰かを呼ぶ声がした。若い僧侶はそれに慌てて返事をし、立ち上がった。

 若い僧侶は長居をし過ぎたらしい。

「あ。これは話のお礼です、皆さんで召し上がって下さい」

 僧侶はダボダボとした服から小さな酒瓶を取り出し、机に置いた。ラベルを一目見たパステルは感極まった様子で僧侶に抱きついた。

「今日最高のプレゼントよ」

 血迷ったか、その腕力で絞め殺すのかと思ったが、直ぐに僧侶を離した。

 照れた様子の若い僧侶は、にやけ顔のまま部屋を出た。

 禁欲生活を送っている僧侶では、パステルに抱きつかれても照れるらしい。単に趣味の問題なのかもしれないが。それにしても悪趣味だ。

 酒瓶のラベルを撫でて重なっていないか、貼り直されていないか、パステルは入念に確かめる。

 こんなパステルも珍しい。酒に詳しい方ではないが高い部類に入る物だとは知っている。しかし、抱きつくほど嬉しい貰い物だった覚えはない。いつもと違うパステルの行動で酒に興味を持った。

「そんなに高い酒なんですか、それ」

 コルク栓も手袋越しに何度も手触りを確かめている。高値で売れるのならば売ってしまいたい。自分は上戸でもないし酒が好きでもない。自分が飲めない酒への興味は薄い。

「あいつ本当に僧侶かしら。多分、暗殺者だと思うなアタシ」

 パステルは酒瓶をグレナンデへ渡し、毒の判別を頼むとベッドに転がった。

「僧侶の服って結構ダボダボしてて、暗器隠すのに丁度いいわよね。それに体も隠せる」

 指を曲げて、僧侶の装備品をチェックしたことを合図する。

 抱きついて相手の身体を調べたのだ。様子からして、暗器らしき物があったのだ。いつもと違う行動に合点して、パステルが正気だった事に安心を覚えた。

 パステルの言葉で、グレナンデは疑り深く瓶の外装を調べ始めた。

 特に、コルク栓を重点に調べて毒物が混入していないかを見極めようとする。しかし、特に変わった様子が無いのか封を切ってコルクを抜いた。顔から瓶を離し、手で煽ぎ匂いを確かめる。無臭の毒物もあるだろうに、どうしてそんな危険な行為をするのか訝しがった。

 中身を数滴机に零しコルクを戻した。零した酒に何事かを呟いたが何も起こらなかった。

「無毒のようね。安心していいわ」

 全ての確認を終え、グレナンデはパステルに瓶を返した。

 瓶の封が切られてしまえば価値が落ちる。売却価格だけでなく風味などが落ちてしまう、それを承知で渡したのだ。パステルは礼を言うと、眉を少し寄せ酒瓶を荷物に仕舞った。

 ガリア司祭からの伝言は昼食と同時に運ばれて来た。

 肩幅のある女性が大きな籠に昼食のチーズやパンを入れて運んで来たのだ。

 髪を高くまとめ上げ、いかにも働き者といった顔で片方のピアスをしていた。持ってきたパンを小さなナイフで器用に切り分け皿に積み上げていく、同様にハムとチーズも皿に盛られる。

 どれも保存がきくものばかりで、折角町中にいるのだから温かいものが食べたいという欲望を叶えてくれそうになかった。

 だが、それは籠の中に隠れていた肉包みのパイが出てくるまでだった。パイを切ると、湯気を上げて今しがた窯から出てきたばかりだと主張する。肉汁の匂いが部屋に充満する。

 朝食はとうに消化されて腹の中は空っぽだ、いくらでも入る。などと腹の虫が鳴いた。

「嬉しい音だねぇ」

 女性は愉しそうにパイを切り分けた。最後に洗っただけの野菜が放り出されて机の大半が埋まった。女性が食べ物に感謝の言葉をかけ終えると同時に食事を始める。温かい食事にありつけることはこれほど有難い、しかも美味い。

「そんなに急いで食べなくったっていいじゃないか。料理は足が生えて逃げたりしやしないよ」

 いつもと同じペースで食べているだけでそんな事を言われる。自覚はしていたが早食いになりつつある。悪い傾向なのは分かっているが、出てくる料理が美味い所為であって、自分の所為ではない。何よりも空腹が悪いのだ。

 女性は食事の世話をやいて水を注いだり、足りなくなったハムを切ったりしてくれた。食事が一段落した頃に、司祭からの伝言があったのだとポケットから紙を取り出した。

 それを受けとって読み上げる。まるで本に書かれているかのような几帳面な文字が整然と並んでいた。書いた者の性格が分かるような気がする文字だった。

「夜、鐘が八回鳴ったら教会へおいで下さい」

 時間を決めて鐘を鳴らしている教会らしい表現だ。

 教会の鐘がどのくらいの間隔で鳴らされているのかは知らないが、夜には十分な時間があるはずだ。何が忙しいのか、司祭にも、町の司祭にも就いたこともない自分は想像するのも面倒だった。

 紙をパステルに渡し、食べ終えた食器の片付けを手伝う。片付けてしまうと、何故あの籠にこれだけの量が入っていたのだろうと不思議に思った。籠に食器が収まると他の物が入る余裕など無いように見えたからだ。何処に自分達が食べた物は入っていたのだろうか。

「はい、ありがとさん。そういえば、あんたら竜を運んでったけど何処へ持ってたんだい?」

 女性の言葉に面食らった。女性が竜の事を知っていたのも多少驚いたが、竜が何処かへ運ばれたというのも驚いた。

 女性に身を乗り出して問い返す。

「運んでったって、誰がですか? 今日帰って来てここから動いてないんですよ。誰にも移動なんて頼んでません」

 驚いて目を大きく開く、それでも慌てふためかず冷静に状況を説明してくれた。自身を落ち着かせるように口の中で反復しながら女性は言った。

「あたしはあんたらが竜を置いてった解体小屋の女房さ。旦那が面白いもん貰ったって喜んでたよ。それでね、あんたらが出かけた後、ガリア司祭様が帰ってきたら、あんたらの言付けだって持って行っちまったんだよ。やっぱりあんたらじゃないわけだね」

 溜息と共に女性は困った目で教会の方向を見た。この町の住人にしてはやけに親切にしてくれたわけだ、少ないながらも疑っていた自分が消えた。

 どうやらガリア司祭から取り立てなくてはいけない物が増えたようだ。

 報酬は払わない、自分達が預けていた竜を勝手に持って行く、これは宣戦布告に他ならない。もう少し相手を考えて行動すればいいものを、どうして司祭のくせに頭が悪いのだろうか。

 幼生とはいえ竜を二人で殺害して持ち帰った者、それと別に二人の冒険者がいるのだ。それを敵に回してまともな生き方が出来るとでも思っているらしい。

 それとも神の吐息を探し出せずに、途中で倒れるとでも思ったのか、だとしたら冒険者を甘く見過ぎている。

 物より金よりも命が一番大事、誰かに仕えているわけでもない者達は自らの利害を最も重要視する。仕事をやり遂げられなくとも命は持って帰る。

 大それた使命も、意志もない、自分にはそれが出来る。

「一応確認の為に、何が持ち出されたのか見に行かせて下さい」

 大急ぎで荷物を抱え解体所に駆けつけると、意気消沈した小屋の主人が出迎えてくれた。

 預けておいた竜は、血を入れた瓶の一本、内臓の一つも残っていなかった。パステルが主人に渡した欠けた鱗さえも奪われていた。話で聞くよりも実際に現場を見ると余計に腹が立つもので、怒りが静かに降り積もった。

 解体所の主人にしてみれば司祭からの命令だ、いかに納得が出来ない理由でも逆らえるわけがない。逆らえば不信者として迫害されるのは目に見えている。解体所の仕事をしているというと、既に町から隔離され嫌われているであろう。更に教会から迫害されれば町で暮らしていけないだろう。

 権力を持つというだけで弱者に圧を掛ける者など大嫌いだ。そして、自分の収益を掻っ攫って行く奴はもっと嫌いだ。そのどちらでもある者を許せるはずがない。

「これは夜が楽しみでなりませんね」

 冷たい炎が自分の中で燃え上がるのを実感した。